1980年代の日本が経済的に強い立場にあった時代に日本のビジネスパーソンとの交渉を任された米国人に向けて書かれた手ほどきです。日本語版も1988年に出版されておりブックオフオンラインなどで中古本が手に入ります。 日本人との交渉を攻略する本では残念ながらなく、 日本の意思決定や交渉で守らなければならない不文律および手順や、交渉を有利にするために日本人が切り出す「ストーリー」の例示がされています。 当時は外資が日本でビジネスをするにあたっての規制があらゆるところに張り巡らされていたため、 省庁対応の重要性も説かれています。現代でも日本企業にとって省庁の意向を確認することは重要なので通じる部分はあるのだろうと思います。
日本のユニークさ
本書では交渉場面で抑えなければならない日本の特性として「浪花節」「メロドラマ」「被害者意識」の3つを挙げています。特に浪花節は意思決定の進め方として必要な枠組みとしており、
- 背景共有
- 現在直面する悲劇的な課題を列挙
-
- 相手の主張を受け入れた場合
- 自分の主張を受け入れなかった場合
- 相手の主張の取り下げ or 自分の主張の受け入れ を迫る
また、この枠組の特性上、交渉相手と部分的な落とし所をつくることはなく相手の意見を受け入れること(負け)を恥として極度に避けると紹介しています。そして最後に倫理観に訴える形で意思決定を迫るのでいかにして交渉の場における「被害者」のポジションを先に確立するかがポイントとのこと。
この他、日本人は「細かい条件の交渉は避け、大きい抽象的なレイヤーの合意を目指す」「意思決定者を交渉の場で最後まで隠して、切り札として出す」「ルールよりも人間関係」など2020年代の今もやってるなぁと感じるような観察もありました。
外資系営業をされる方が日本大企業に営業にいく場面でも通用しそうな内容だと思います。